2016年9月5日月曜日

大使館からのお知らせ(当国海外安全情報(危険情報)の改訂について)

在留邦人の皆様へ

平成28年9月2日
在パキスタン日本国大使館

~ 大使館からのお知らせ ~
(当国海外安全情報(危険情報)の改訂について)

 この度、外務省より、9月1日付の当国海外安全情報(危険情報)が出されました、お知らせいたします。なお、当地の危険度は全ての地域において「継続」となっておりますが、各地で発生した各種事案等の内容については新たな内容が追加されておりますので、邦人の皆様が当地で安全に滞在するための参考としていただければ幸いです。

パキスタンについての海外安全情報(危険情報)の発出

【危険度】
●レベル4:退避を勧告します。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)
・アフガニスタンとの国境付近一帯
・連邦直轄部族地域(FATA)全域及び郡隣接部族地域
・ハイバル・パフトゥンハー州(旧北西辺境州。以下「KP州」)のスワート郡,アッパー・ディール郡,ローワー・ディ-ル郡,マラカンド郡,マルダン郡,チャルサダ郡,ブネール郡,シャングラ郡,コハート郡,バンヌー郡,ハングー郡,デラ・イスマイル・カーン郡,カラック郡,ラッキ・マルワット郡及びタンク郡
・インドとの管理ライン(以下「LOC」)等付近一帯

●レベル4:退避を勧告します。渡航は止めてください。(退避勧告)(真にやむを得ない事情で現地に残留せざるを得ない場合は,政府機関,所属団体等を通じて組織としての必要かつ十分な安全対策をとってください。)(継続)
・KP州のペシャワル郡

●レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(滞在中の方は,不測の事態に巻き込まれないよう退避を含め危険回避を真剣に心掛けてください。)(継続)
・KP州のノウシェラ郡及びスワビ郡
・バロチスタン州のデラ・ブグティ郡及びコールー郡
・シンド州のジャコババード郡

●レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)
・イランとの国境付近一帯
・バロチスタン州のクエッタ市
・ギルギット・バルチスタン地域(以下「GB地域」)のディアメル郡,アストール郡及びギゼル郡(アフガニスタンとの国境付近を除く)
・KP州のチトラル郡(アフガニスタンとの国境付近を除く)

●レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
・イスラマバード首都圏
・パンジャブ州
・KP州のアボタバード郡,バタグラム郡,ハリプール郡,コヒスタン郡,マンセーラ郡及びトルガル郡
・カラチ市を含むシンド州(ジャコババード郡を除く)
・バロチスタン州(アフガニスタン及びイランとの国境付近,デラ・ブグティ郡,コールー郡及びクエッタ市を除く)
・パキスタン側カシミールの一部でアーザード・ジャンムー・カシミールと呼ばれる地域(以下「AJK」)(LOC付近を除く)
・GB地域のギルギット郡,フンザ・ナガル郡,スカルドゥー郡,ガンチェ郡(アフガニスタンとの国境付近及びLOC付近を除く)

【ポイント】
●アフガニスタンとの国境付近一帯,連邦直轄部族地域(FATA),インドとの管理ライン付近一帯等には,「レベル4:退避を勧告します。渡航は止めてください。(退避勧告)」が発出されています。不測の事態に巻き込まれる可能性が極めて高く,非常に危険であることから,これらの地域への渡航は厳に控えてください。
●全土にテロ・誘拐の脅威があります。最新の関連情報の入手に努め,適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。
●国内各地で政府,社会不満等によるデモや集会が頻繁に行われています。これらには絶対に近づかないようにしてください。
☆詳細については,以下の内容をよくお読みください。

(本文)
1.概況
(1)パキスタンにおいては,パキスタン・タリバーン運動(TTP)等のイスラム過激派勢力によるテロが多発しています。特に2007年以降,北西部を中心に,これら勢力に対する軍事掃討作戦が実施されたことから,同作戦に対する報復,テロが激化しています。テロ事件の多くは,アフガニスタンとの国境地帯やFATA,KP州を中心に,軍や警察等治安当局及びその関連施設等を標的として発生しています。
また,バロチスタン州クエッタ市及びその周辺やシンド州カラチ市等では,シーア派等宗教的少数派の宗教行事や礼拝所を標的とした事件が年間を通じて多発しているほか,カラチ市では外国人を狙ったテロも発生しています。パンジャブ州は,テロ発生数は比較的少ないですが,州都であるラホール市等の都市では治安機関や宗教施設等を狙った爆弾テロ事件が発生しています。
また,2014年6月にTTPが外国人投資家,多国籍企業,外国の航空会社に対してパキスタンでの商業活動を中止し撤退するよう警告するとともに,外国企業も攻撃の対象となる旨の声明を発出したことについても注意が必要です。

(2)また,パキスタンの各都市においては,銃器を使用した強盗等の犯罪にも注意する必要があります。特に,カラチ市においては,治安関係者等を標的とした殺人事件や,ギャングによる抗争等が年間800件以上発生しています。さらに,反政府,反テロ,頻発する停電,ガスの停止等に対するデモが国内各地で行われています。デモの参加者が暴徒化するおそれもあり,2014年12月8日のファイサラバードで行われた抗議活動の際は,対立するグループ間の衝突で17名が死傷しました。デモに限らず,人の多く集まる場所では常に事件や事故に巻き込まれる危険性が排除できないことから,デモや集会等には絶対に近づかないよう注意する必要があります。

(3)KP州及びバロチスタン州をはじめ,各地において誘拐事件が発生しており,外国人を含む被害者が出ています。事件は長期化する傾向にあり,被害者が殺害される事例も発生しています。

(4)2013年6月23日,GB地域東部に位置するナンガ・パルバット山の麓で,宿泊施設に滞在していた外国人旅行者等が襲撃され,外国人9名,パキスタン人2名が殺害されました。治安当局の捜査により,実行犯の大部分が逮捕されましたが,一部は逃亡中であり,ナンガ・パルバット山が所在するディアメル郡,アストール郡及びギゼル郡では武装勢力の一斉捜索が現在でも定期的に行われています。         

(5)なお,パキスタンでは,2014年10月に,TTP元報道官がISIL(イラク・レバントのイスラム国)に対する忠誠を表明する等,ISILの活動に呼応する動きも見られ,2015年1月,ISILがアフガニスタン,パキスタン及びその周辺の土地を含む地域に「ホラサーン州」の設立を宣言しました。2016年8月,クエッタで爆弾テロが発生し,70名以上の死者が出た際,「ISILホラサーン州」を称する組織が犯行声明を出すなど,今後も,こうした組織の動向にも注意が必要です。

(6)近年,シリア,チュニジア及びバングラデシュにおいて日本人が殺害されたテロ事件や,パリ,ブリュッセル,イスタンブール,ジャカルタ等でテロ事件が発生しています。このように,世界の様々な地域でイスラム過激派組織によるテロがみられるほか,これらの主張に影響を受けた者による一匹狼(ローンウルフ)型等のテロが発生しており,日本人・日本権益が標的となり,テロを含む様々な事件の被害に遭うおそれもあります。このような情勢を十分に認識して,誘拐,脅迫,テロ等に遭わないよう,また,巻き込まれることがないよう,海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め,日頃から危機管理意識を持つとともに,状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

2.地域別情勢
(1)アフガニスタンとの国境付近一帯,FATA全域及び郡隣接部族地域,KP州のスワート郡,アッパー・ディール郡,ローワー・ディ-ル郡,マラカンド郡,マルダン郡,チャルサダ郡,ブネール郡,シャングラ郡,コハート郡,バンヌー郡,ハングー郡,デラ・イスマイル・カーン郡,カラック郡,ラッキ・マルワット郡及びタンク郡,LOC等付近一帯
:「レベル4:退避を勧告します。渡航は止めてください。(退避勧告)」

ア アフガニスタンとの国境付近一帯,FATA全域(南北ワジリスタン管区,バジョール管区,モーマンド管区,ハイバル管区,クーラム管区,オラクザイ管区)及び郡隣接部族地域
これらの地域では,アフガニスタンの劣悪な治安状況の影響と両国間国境の管理の難しさもあり,TTP等の反政府武装勢力が,アフガニスタンとの間で自由に越境したり,同地域に潜伏したりしていると見られます。同地域では,2014年6月15日以降,パキスタン軍による大規模な軍事掃討作戦が行われており,これに対して,武装勢力による報復活動等が周辺地域において多発しており,不測の事態に巻き込まれる可能性が極めて高く,非常に危険であることから,これらの地域への渡航は厳に控えてください。
なお,FATAでは,1947年の建国以来パキスタンの法律が適用されておらず,外国人旅行者に何か問題が生じた場合でも,パキスタン当局の迅速な対応は期待できません。また,パキスタンからアフガニスタンへの入国も,同国の治安情勢が極めて不安定なため,厳に控えてください。

イ KP州のスワート郡,アッパー・ディール郡,ローワー・ディール郡,マラカンド郡,マルダン郡,チャルサダ郡,ブネール郡,シャングラ郡,コハート郡,バンヌー郡,ハングー郡,デラ・イスマイル・カーン(以下「DIカーン」)郡,カラック郡,ラッキ・マルワット郡及びタンク郡
コハート,バンヌー,ハングー,DIカーン各市やその近郊等,KP州南部では,治安部隊等に対する自爆テロ等が発生しています。   
ペシャワル郡に隣接するコハート郡では,2014年10月に市内のバス停留所で爆弾テロが発生し,市民6名が死亡,17名が負傷しました。チャルサダ郡では,同年4月,警察車両を狙った爆発事件が発生し,少なくとも3名が死亡,41名が負傷,2016年1月には,同地域に所在する大学に武装集団が侵入し,同大学の学生や教員を襲撃,20名以上が死亡、30名以上が負傷するテロ事件も発生しています。また,武器,爆発物の不法所持により検挙される事件は後を絶ちません。
バンヌー郡では,2014年1月に軍の車列に対する爆弾テロが発生し,少なくとも26人が死亡しました。
DIカーン郡では,2014年5月,ラホールからバロチスタン州へ旅行中の中国人が,TTPのメンバーにより誘拐される事件が発生しています。
また,スワート,アッパー・ディール,ローワー・ディール,ブネール及びシャングラの各郡では,2009年4月末より数か月間,大規模な軍事掃討作戦が実施され,これに対する報復とみられる爆弾テロや誘拐事件が多発しました。その後,テロ事件等の件数は減少しつつありますが,2013年9月には,これら地域を所管する第17師団長(少将)が爆弾によって殺害される事件が発生しました。これらの地域では,今後もテロ攻撃が行われる可能性があります。
特に,スワート郡のミンゴラ等はかつて多くの観光客が訪れる観光地であったことから,この地域を含むツアーを企画・実施する旅行会社も見受けられます。同地域の治安は上述のとおり非常に危険な情勢ですので,渡航は厳に控えてください。

ウ LOC等付近一帯
同地域には,LOC等を挟んでパキスタンとインドの両国軍が展開しています。2014年7月以降,両国の国境警備隊による銃撃戦等が続発し,双方の民間人にも被害が発生しました。このように,LOC等付近一帯の情勢は引き続き不安定ですので,渡航は厳に控えてください。

(2)KP州のペシャワル郡
: 「レベル4:退避を勧告します。渡航は止めてください。(退避勧告)」(真にやむを得ない事情で現地に残留せざるを得ない場合は,政府機関,所属団体等を通じて組織としての必要かつ十分な安全対策をとってください。)

 KP州ペシャワル郡においては,治安機関等の政府関係施設や宗教施設等を標的としたテロ事件が多発しているほか,市民の利用するマーケットやバスターミナル等,ソフトターゲットをねらったテロも見られます。2015年8月18日には,パキスタン空軍キャンプへの襲撃テロ事件が発生し,29名が死亡し,約25名が負傷しました。また,2016年3月16日,州政府職員を乗せたバスが標的となる爆弾テロ事件が発生し,16名が死亡,53名が負傷しました。これらの事件以外にも,同郡内においては,政府・治安機関員を標的にした殺人事件や爆弾テロが散発しているほか,大量の武器・弾薬及び爆発物が押収されている等,極めて不安定な治安状況です。また,身代金を目的とした誘拐事件も多発しています。
 このため,政府当局は外国人による同地域への立入りに非常に神経質になっており,関係当局による外国人の拘束事案もたびたび発生しています。
 このように同地域は非常に危険ですので,渡航は厳に控えてください。真に止むを得ない事情で現地に滞在する場合には,不測の事態に巻き込まれることのないよう必要かつ十分な安全対策をとってください。

(3)KP州のノウシェラ郡及びスワビ郡,バロチスタン州のデラ・ブグティ郡及びコールー郡,シンド州のジャコババード郡
:「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」(滞在中の方は,不測の事態に巻き込まれないよう退避を含め危険回避を真剣に心掛けてください。)

ア KP州のノウシェラ郡及びスワビ郡
これらの地域では,隣接するペシャワル郡等からテロリストが流入している可能性があります。また,警察等治安当局を標的にしたテロ事件のほか,学校や一般の商店を標的とした爆弾テロもこれまで発生しており,市民生活に深刻な影響を及ぼしています。

イ バロチスタン州のデラ・ブグティ郡及びコールー郡
これらの地域では,反政府武装勢力が軍及び政府権益に対するテロ行為を続けています。一般住民が誤って地雷を踏んで死傷する事案も発生しており,治安状況回復の兆しはみられません。パキスタン外務省は各国外交団に対し,最近の現地の治安情勢を受け,いかなる外国人も適切な警備措置なくバロチスタン州に渡航することは極力避けるよう呼びかけています。

ウ シンド州ジャコババード郡
同郡には,バロチスタン州のデラ・ブグティ郡及びコールー郡から反政府武装勢力が流入しており,治安情勢は非常に不安定です。

上記の状況を踏まえ,これらの地域への渡航は控えてください。止むを得ず滞在する場合には,不測の事態に巻き込まれないよう退避することを含め危険回避を真剣に心がけてください。

(4)イランとの国境付近一帯,バロチスタン州のクエッタ市,GB地域のディアメル郡,アストール郡及びギゼル郡(アフガニスタンとの国境付近を除く),KP州のチトラル郡(アフガニスタンとの国境付近を除く)
:「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」

ア イランとの国境付近一帯
イランとの国境付近では,スンニ派過激派組織ジュンダッラーが,イラン側のシスタン・バルチスタン州に頻繁に越境し,シーア派モスク等で自爆テロ攻撃を繰り返しています。2014年6月上旬には,バロチスタン州タフタン地区のホテルでシーア派巡礼者を狙った自爆テロに伴う激しい銃撃があり,同派巡礼者30名以上が殺害されました。また,イラン南東部(シスタン・バルチスタン州及びケルマーン州)では,外国人を狙った誘拐事件が発生しており,2007年には,パキスタンから陸路でイランに入国した日本人短期渡航者が誘拐されました。   

イ バロチスタン州のクエッタ市
クエッタ市ではスンニ派過激派組織ラシュカレ・ジャングビーによるシーア派への攻撃に加え,パキスタンからの独立や同州の自治拡大を目的とする組織等による政府及び治安機関に対する攻撃,特にパンジャブ州からの移住者に対する襲撃等が頻発しています。2016年2月上旬には,市中心部で辺境警備隊の車列を狙った自爆テロ事件が発生し,10名以上が死亡しました。また,同年8月上旬には,市中心部の市民病院で自爆テロが発生し,70名以上が死亡しました。さらに,外国人を標的とした誘拐事件の脅威も非常に高く,2012年1月には,クエッタ市内で,赤十字国際委員会(ICRC)の英国籍イエメン人医師が車両で移動中に武装集団に誘拐され,殺害される事件が発生しました。こうした状況を踏まえ,パキスタン外務省は,いかなる外国人も適切な警備措置なくバロチスタン州に渡航することは極力避けるよう呼びかけています。

ウ GB地域のディアメル郡,アストール郡及びギゼル郡(アフガニスタンとの国境付近を除く)
2013年6月23日,同地域にある世界第9位の高峰ナンガ・パルバット山の麓において,宿泊施設に滞在していた外国人旅行者等が襲撃され,中国人やウクライナ人を含む外国人9名,パキスタン人2名が殺害されました。本事件に対しては,TTPを始めとする複数の過激派組織が犯行声明を発出しました。治安当局の捜査により,実行犯の大部分が逮捕されましたが,一部は逃走中であり,ナンガ・パルバット山が所在するディアメル郡,アストール郡及びギゼル郡では定期的に武装勢力の一斉捜索活動が行われています。同地域ではこれまで,イスラム教スンニ派とシーア派の宗派対立が発生し,治安が急激に悪化する事態に発展したこともあり,また,2012年8月には,隣接するKP州マンセーラ郡ナラン付近において,TTPによるシーア派教徒及び同地域を車で通過中の旅行者に対する銃撃事件が発生しています。
また,複数のテロ組織がパキスタン国内での開発プロジェクトに参加する中国人技術者をテロの対象とするとの情報があります。GB地域では中国による援助事業が実施されている関係で,多くの中国人が滞在しており,当局による警戒が強化されています。

エ KP州のチトラル郡(アフガニスタンとの国境付近を除く)
 アフガニスタンとの国境付近一帯では,アフガニスタンの劣悪な治安状況の影響と両国間の国境管理の難しさもあり,ローカル・タリバーン等の反政府武装勢力が,アフガニスタンとの間で越境を繰り返したり,潜伏したりしていると見られます。

上記の状況を踏まえ,不測の事態に巻き込まれることを避けるため,これらの地域については,アフガニスタンとの国境付近以外であっても,パキスタンからイランへの陸路入国を含め,渡航は控えてください。

(5)イスラマバード首都圏,パンジャブ州,KP州のアボタバード郡,バタグラム郡,ハリプール郡,コヒスタン郡,マンセーラ郡及びトルガル郡,カラチ市を含むシンド州(ジャコババード郡を除く),バロチスタン州(アフガニスタン及びイランとの国境付近,デラ・ブグティ郡,コールー郡及びクエッタ市を除く), AJK(LOC付近を除く),GB地域のギルギット郡,フンザ・ナガル郡,スカルドゥー郡,ガンチェ郡(アフガニスタンとの国境付近及びLOC付近を除く)
:「レベル2:不要不急の渡航は止めて下さい。」

これらの地域では,テロ・誘拐事件のほか,強盗,窃盗事件や発砲事件等の一般犯罪も多発していますので,不要不急の渡航は控えてください。その上で渡航・滞在する場合には,現地の最新の治安情勢について情報収集に努めるとともに,十分な安全対策を行い,不測の事態に巻き込まれないよう特別な注意を払ってください。また,下記3.の注意事項に留意し,デモ等人の多く集まっている場所や人通りの少ない道の通行は避ける等,十分注意して行動して下さい。
 
ア イスラマバード首都圏
イスラマバードは,警察当局による捜索や取締り,検問所での車両検査等の治安対策措置が最も強化された都市です。
一方,政府庁舎や要人,外国資本の商業施設等を標的としたテロや外国人誘拐のリスクは常に存在します。同市内ではこれまでもテロ未遂事件が複数発生しており,2014年3月~5月には市内の複数箇所で死傷者を伴う爆発事案が連続して発生しました。また、2016年1月にも、市内中心部の住宅街に所在する地元TV局を狙った小規模な爆発事件も発生しています。また,2014年8月下旬~12月中旬及び2016年3月末には,政府に対する大規模な抗議活動が発生し,負傷者を伴う治安部隊との衝突に発展する事態になりました。このように,テロ以外の要因により急激に治安が悪化する可能性があることも踏まえ,今後の治安動向には引き続き注意を払う必要があります。

イ ラワルピンディ市
 ラワルピンディには陸軍司令部等の軍関連施設が多く,同施設や軍関係者をねらったテロ事件が発生しています。2014年1月には,軍施設付近で爆弾テロが発生し,少なくとも13人が死亡しました。また,2015年1月及び3月には,市内の宗教施設に対する爆弾テロが発生し,死傷者も出ました。今後の治安動向には引き続き特段の注意を払う必要があります。

ウ ラホール市
ラホールの治安情勢は,国内の他都市に比べ比較的安定した状況ではありますが,反政府勢力による警察・警察関連施設,宗派対立に根ざした宗教関連施設,バザールに対するテロ事件等が市内中心部等において,毎年数件発生しています。
 2014年11月2日には,ラホール市郊外のワガー国境付近で爆発事件が発生しました。同事件による外国人被害はありませんでしたが,一般来訪者及び同国境の警備に当たっていた治安当局者約60名が死亡,100名以上が負傷しました。本事件は,同国境で毎日行われている国旗降納式終了後に発生し,同行事を観覧し終えた訪問者で混雑する駐車場前で発生したことから,多くの死傷者が発生しました。また,2015年2月には市内警察署を狙った爆弾テロ,3月には市内キリスト教宗教施設を狙った爆弾テロが続けて発生し,一般人を含む複数の死傷者が発生,同年12月には,市内中心部の所在する地元TV局を狙った小規模な爆発事件が発生し,最近では2016年3月に市内に所在する公園で行われたキリスト教関連行事を狙った自爆テロにより,女性や子供を主として,約70名が死亡,200名以上が負傷する事態となりました。上記を踏まえ,市内商業地区及び郊外地区の治安動向には引き続き特段の注意を払う必要があります。

エ パンジャブ州(ラホール市,ラワルピンディ市を除く地域)
パンジャブ州の治安は全般的に安定しています。しかし,一部地域では襲撃事件や爆弾テロが発生しており,滞在にあたっては特段の注意が必要です。
パンジャブ州南部は、同地域を拠点とするイスラム過激派がKP州やバロチスタン州との境界付近で活動しているため,同地域に渡航する場合には,事前に現地情勢を確認し,必要な警備措置を講じる等万全な態勢を敷く必要があります。
パンジャブ州ムルタン市においては,2015年9月,10名以上が死傷し、60名以上が負傷する爆発事件が発生しています。また、イタリア人とドイツ人の援助関係者が武装集団に誘拐される事件が2012年に発生しており,未解決のままです。今後も同地域でのテロ事件や外国人を標的とした誘拐のおそれは排除されませんので,十分な注意が必要です。

オ KP州のアボタバード郡,バタグラム郡,ハリプール郡,コヒスタン郡,マンセーラ郡,トルガル郡
 KP州東部においては,過去に援助関係者への襲撃が発生しました。現在の治安情勢は比較的安定していますが,引き続き特段の注意が必要です。
同地域では過去に,ギルギット行きのバスがコヒスタン郡で襲撃され,シーア派の乗客が殺害される事件が発生しており、また、マンセーラ郡ナラン付近にてTTPによる同様の殺害事件が発生しています。このように,同地域では,過激派等による無差別襲撃事件が発生していることに留意する必要があります。

カ シンド州カラチ市
カラチ市では宗派間抗争,政治対立及び民族対立等に起因する爆弾・銃撃テロ事件が多発しています。2013年3月には,シーア派居住区で大規模な爆弾テロ事件が発生し,40名以上が死亡したほか,同年5月の総選挙期間中には選挙事務所等を狙った爆弾テロにより多数の死傷者が発生しており,同年9月より,政府はレンジャー部隊を投入して取締りを強化してきました。しかし,2014年6月上旬には,TTP及びウズベク系武装集団がカラチ国際空港敷地内に侵入し,治安部隊と銃撃戦を行い,治安部隊や空港職員等28名を殺害するという凶悪なテロ事件が発生しました。また,翌日にも空港警備隊に対する銃撃事件が発生し,3日間にわたり空港機能が麻痺する事態となりました。さらに,同年9月上旬には武装勢力が海軍基地を襲撃し,軍関係者が死傷しました。また,2015年5月中旬には,シーア派教徒の乗ったバスが武装集団に襲撃され,乗客45名が死亡しました。最近では,2016年4月下旬,ポリオの予防接種運動会場を武装集団が襲撃し,警護中の警察官7名が殺害されました。さらに5月中旬には,中国人技師の乗った車両に対する爆弾テロ事件が発生し,同技師が負傷しました。このように,カラチ市では,政府・治安機関,軍施設等を狙った凶悪なテロ事件が多発している他,外国人を標的にしたテロ事件も発生しています。
また,上記のテロ事件に加え,ギャング間の抗争等を含めると,カラチ市では年間800件以上の殺人事件が発生しています。
更に,けん銃等を使用した強盗や誘拐事件等の犯罪も多発しています。2014年は邦人が被害に遭う強盗事件が1件発生しました。なお,2016年には現在のところ,邦人が被害に遭う誘拐事件は発生していませんが,富裕層を狙った身代金目的の誘拐事件が依然として発生していることから,特段の注意が必要です。
こうした状況を踏まえ,カラチ市への渡航・滞在については,真に必要な渡航・滞在を除き控えてください。仮に渡航・滞在される場合も,民間警備会社による警備等十分な安全対策を講じるとともに,最新の治安情報の入手に努めて行動してください。

キ シンド州(カラチ市,ジャコババード郡を除く)
ハイデラバード市郊外や同州内陸部においては,警察による武装強盗団(ダコイト)の取締り強化及び高速道路警察隊による幹線道路のパトロール強化が実施されていますが,依然として強盗等の凶悪犯罪が発生しています。陸路で移動せざるを得ない場合は夜間の移動を避け,常時複数の武装警備員をつける等の安全対策を必ず取ってください。

ク バロチスタン州(アフガニスタン及びイランとの国境付近,デラ・ブグティ郡,コールー郡及びクエッタ市を除く)
バロチスタン州においては,パキスタンからの独立や同州の自治拡大を目的とする組織等による反政府活動が盛んに行われているほか,治安機関へのテロ攻撃や他州からの移住者をねらった暗殺が多発しています。また,同州からアフガニスタンに向かう幹線道路では,米国やNATO駐留軍への補給物資輸送車両を襲撃する事件が多発する等,州内の治安状況は極めて不安定です。2015年5月には,カラチ行きのバス2台が襲撃され,22名が殺害されました。
また,違法薬物の取引に関与する犯罪組織や武装勢力によるとみられる誘拐事件等が多発しており,外国人も標的にされています。2013年3月には,イランからクエッタに向かうハイウェイでチェコ人女性観光客2人が武装集団に誘拐される事件が発生したほか,2014年1月には,マストゥングにおいて,武装集団が自転車で移動中のスペイン人男性を誘拐しようとして警護要員と銃撃戦になり,警護要員6人が死亡し,同男性が負傷する事件が発生しました。
こうした状況を踏まえ,パキスタン外務省は,いかなる外国人も適切な警備措置なくバロチスタン州に渡航することは極力避けるよう呼びかけています。

ケ AJK(LOC付近を除く)
AJK全域は旅行制限地域となっており,AJKに立ち入るためにはパキスタン内務省の許可を取得する必要があります。

コ GB地域のギルギット郡,フンザ・ナガル郡,スカルドゥー郡,ガンチェ郡(アフガニスタンとの国境付近及びLOC付近を除く)
2013年のナンガ・パルバット山麓における事件以降,ディアメル郡,アストール郡及びギゼル郡以外のGB地域では,日本人を含め外国人が被害に遭う事案は発生していません。また,2012年4月,宗派間対立の激化により,ギルギット市内に外出禁止令が出され,邦人を含む外国人旅行者が留め置かれる事態が発生しましたが,それ以降,同地域では,イスラム教宗教行事であるアシュラ期間中も含め,宗派間衝突等は発生していません。
しかし,同地域では,過去に上記のような事案が発生していることを踏まえ,同地域へ渡航する必要がある場合には特別な注意を払い,十分な安全対策を取ってください。また,最新の現地治安情勢について情報収集に努めるとともに,安全確保のための準備を十分に行い,不測の事態に巻き込まれないよう注意してください。

3.渡航・滞在にあたっての注意
パキスタンに渡航する際の一般的な注意事項,主要都市の犯罪傾向については,「安全対策基礎データ」(http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure.asp?id=011)も御参照ください

(1)渡航者全般向けの注意事項
ア 夜間の単独での外出は避けてください。パキスタンでは性犯罪も多発しており,特に女性は注意が必要です。
イ 夜間に陸路を移動する場合には,短距離であっても,タクシーや路線バスを利用せず,自家用車や信用のおける運転手付きレンタカー等の安全で確実な交通手段を確保してください。
ウ バスを使った長距離移動については,武装強盗団が出没する恐れがあるので極力控えて下さい。鉄道も,安全・確実な移動手段とは言えないので,できる限り避けて下さい。
 
(2)長期滞在者向けの注意事項
ア 現地に3か月以上滞在される方は,緊急時の連絡などに必要なので,到着後遅滞なく最寄りの在パキスタン日本国大使館(滞在先がイスラマバード首都圏,パンジャブ州,KP州,GB地域,AJKの場合)又は在カラチ日本国総領事館(滞在先がシンド州,バロチスタン州の場合)に「在留届」を提出してください。また,住所その他届出事項に変更が生じたとき,又はパキスタンを去る(一時的な旅行を除く)際には,必ずその旨を届け出てください。在留届の届出は,在留届電子届出システム(ORRネット,http://www.ezairyu.mofa.go.jp )による届出をお勧めします。また,郵送,FAXによっても行うことができますので,最寄りの在パキスタン日本国大使館又は在カラチ日本国総領事館まで送付してください。
イ 自宅や職場の周辺で不測の事態が起きた場合は,事態が収まるまでその場に待機するとともに,安否について在パキスタン日本国大使館又は在カラチ日本国総領事館まで連絡してください。
ウ 使用人を雇う際は,使用人が手引きする犯罪も発生しているので,身元の確かな人物を雇用することをお勧めします。解雇する場合は,私怨をかわないよう,円満な形で解雇することが重要です。

(3)短期滞在者向けの注意事項
在留届の提出義務のない3か月未満の短期渡航者の方(海外旅行者・出張者など)についても,現地での滞在予定を登録していただけるシステムとして,201471日より,外務省海外旅行登録「たびレジ」の運用を開始しています(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/ )。登録者は,滞在先の最新の海外安全情報や緊急事態発生時の連絡メール,また,いざという時の緊急連絡などの受け取りが可能ですので,ぜひご活用ください。

(4)テロ・誘拐対策
パキスタンに渡航・滞在される方は,テロや誘拐事件に遭遇したり,巻き込まれたりする危険を避けるよう,上記情報に加え,次の点に十分留意して行動するよう,常に心掛けてください。また,以下も併せご参照ください。
○海外安全パンフレット・資料

ア テロ
○テロの標的となりやすい場所(欧米関連施設,軍・警察等治安当局の施設・検問所・車両等,政府機関,宗教関連施設等)やデモ,集会,現地の行事等,人が多く集まる場所にはできる限り近づかない。
○マーケットやバス停など人の集まる場所での用事は,短時間で効率的に行うとともに,常に周囲の状況に注意を払い,不審な状況を察知したら,速やかにその場から離れる。
○訪問先の情報に十分な注意を払い,必要な場合には十分な警備態勢をとる。
○ホテルのフロント等,不特定多数の人の立ち入りが容易な場所での滞在時間は最小限にする。
○最近は,警察当局によるセキュリティー強化のために渋滞が多くなっているので,渋滞の多い検問所付近の通行は極力避ける。
○現金の引き出し等が集中しがちな月初め,中旬,月末や祝祭日前後には,銀行に多数の人が並び,これを標的としたテロも発生しているので十分注意する。

イ 誘拐
誘拐を防ぐためには,自分自身と家族の安全を守る心構えとして,「目立たない」,「用心を怠らない」,「行動を予知されない」の三原則を念頭に,次のような対策をとり,習慣化することが有効です。
○日常の行動パターンを画一化しない。
○通勤や買い物等に同じ経路や時間帯を使うのではなく,数パターンを使い分ける。
○行動予定を多くの人に知られないようにする。
○現地の言葉が分かる人ほど,周囲の異常を早く察知し,速やかにその場から離れることが可能なので,買い物等で外出する際も含め,常時,身近で信用のできるパキスタン人と一緒に行動する。
○人目の少ない場所を避ける。
○外出中は,周囲に不審者,不審車両,尾行,監視がないか注意する。
○車両で移動する場合は,必ず窓を閉めてドアを施錠し,複数の者が乗車した車両がついてきていないか常時点検する。
○目的地に到着した際も,降車する前に不審者,不審車両がいないか確認する。


(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(外務省代表)03-3580-3311 (内線)2902 2903

(外務省関連課室連絡先)
○外務省領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐関連を除く)
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5140
○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐関連)
 電話:(代表)03-3580-3311(内線)3047
○外務省 海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp/
        http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp (携帯版)

(現地在外公館連絡先)
○在パキスタン日本国大使館
住所:Plot No. 53-70 Ramna 5/4Diplomatic Enclave 1IslamabadPakistan
電話:051-907-2500
国外からは(国番号92) 51-907-2500
ファックス:051-907-2352
国外からは(国番号9251-907-2352
ホームページ(日本語版):http://www.pk.emb-japan.go.jp/indexjp.htm

○在カラチ日本国総領事館
住所:6/2 Civil LinesAbdullah Haroon RoadKarachi75530Pakistan
電話:021-3522-0800
国外からは(国番号9221-3522-0800
FAXファックス:021-3522-0820
国外からは(国番号9221-3522-0820

ホームページ(日本語版):http://www.kr.pk.emb-japan.go.jp/j/index.html